夢現物語
逢鈴は几帳も倒し、豪快に転んだ。

「ほら、言わんこっちゃない。だから言ったのに。」

「も、申し訳ございません。」

逢鈴は頭を下げて、謝った。
貴久はそんな事で腹を立てられるような方ではいらっしゃらないので、「いいよ」とお許しになった。

「それより、早くしておくれ。もう、それで良いから。」

先程の衣を戻しに行こうとしたので、逢鈴を止めた。早く行かなくてはならないらしい。

「逢鈴、早くしませんと、遅れてしまいますわ。他の女房も急かさせなさい。」

扇で顔を隠した女君が現れた。
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