夢現物語
「葵様!」

その女君は姫君で、お暇を持て余し、こっそりとおいでになったのだ。

「お召し物は、持って参りました。どうぞ。此方を。」

逢鈴は戸惑いながらも、それを受け取った。

「では。」

そのまま、貴久は出仕していかれた。

「逢鈴。お前は、もう少し、器量がよろしければね、昔から思っていたのよ。」

「はい………私めも思っておりました。和泉を、見習わなくては、と。」

和泉は確かに、器量も見た目も良く、何処でも重宝される女房である。
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