夢現物語
「はい。それに、失踪なすった御方様に、申し訳ない、と。昔から、そう思ってしまって。」

倭は泣いた。
父君は、それを哀れそうに思われていた。

「仕方が無かったんだ、これは。私には、どうすることも出来なかった。すまない。倭、お前からすれば、辛いことであろう。哀れと思うぞ………」

父君は袖で涙を拭う様な仕草をなさり、しおれた声で仰った。


「葵様。」

姫君はお独りで琵琶を弾かれていた。

「誰?」

振り返って、誰何なさる。
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