夢現物語
「僕です。貴久です。」

それは、貴久でいらっしゃって、久しぶりに曹司に忍び込まれた。

「今朝は助かったよ…………有難う。お陰で、一応、間に合ったんだ。」

「それは、良かったわ。貴方が誰か、一人にでも恨まれるようなことは、したくないの。」

「そっか………流石だなぁ、葵様。ほんと、凄い。女房よりも、乳母よりも頼りになるんだよなぁ。」

「そんな事はないわ。」

姫君はくすくすと笑われて、お持ちになっていた琵琶を脇に置かれて、膝を進められる。

「そんなに女房を馬鹿にしてはなりませんよ。」
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