夢現物語
姫君は歳上の恋人として、姉として、そう諭させた。

「そうかなぁ。あんまり、この邸の女房は馬鹿ばっかり。もっといい人を集めて欲しかった。」

貴久はゴロンと寝転んで、姫君は御自分の袿を掛けて差し上げた。

「ねぇ、葵様。貴女の、諱って葵なのか、それとも、違うのか。」

貴久は御存知ない。姫君御自身さえ、この間知られたのだ。

「教えられないわ。だって、諱なのよ。諱を教えたら、どうなるか、知っているでしょう?」

「その人に支配される、だったかな。違う?」

「そうよ、貴方の者になるの。だから、教えないの。だって、貴方、私の弟だもの。」
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