夢現物語
「頼んでくれた、ということか。」

「えぇ。叔母に。」

「そうか…………して、いつ、届くのか。」

「分かりません。二つ、頂けますか、と頼んだだけですから。此の月内には、でしょうね。」


「まぁ、貴久が?」

乳母から貴久の御事を聞いた桜が驚いていた。

「おめでたいわねぇ。藤一条……じゃなかった、葵の所に通ってて、不幸ねぇ、って思ってたの。あんな卑しい娘にってね。」

桜は脇息に寄り掛かって、扇を手にくるくると弄んでいる。
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