夢現物語
桜は先の病を引きずっていたが、やっと床を出て、いつも通りに過ごすことが出来ていた。しかし、恋人忍は邸に近よることも、文を出すことも出来なくなっていた。

そのせいで、心を痛めていた桜は、まだたまに寝込んだりもする。

貴久の縁談の話を聞いた時、少しは喜んだが、逆に、自分の行く末が心配になった。

(心に刻まれた、深い深い傷口を、抉り出したいの?)

もう、忍には会えない。

気持ちが悪い方へと進んでいってしまって、己にとって取り返しのつかなくなった、この頃である。

しかし、女房や周りに人がいるときは、無理な笑って過ごしている。
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