夢現物語
貴久は驚愕なさり、また、戦かれた。

「藤の三位の姫君様と、ですって。まぁ。凄い、ですわ。」

(まぁ………御縁談の中で、一番評判の悪い姫君だわ。どうせ、泣き落としでもしたのでしょう。姫君の良い噂をでっち上げて、流したんだわ。許せない。当たり前でも、許せないわ!)

逢鈴は怒りを耐えられない。
貴久も必死に隠している様でいらっしゃる。

(今日、崇子様を呼ぼう。そして、愛する人と、死んでしまいたい。今日、使おう。手遅れになってしまう前に。)

ついに、決心なさったらしい、逢鈴に目配せされた。

(ついに…………って今日渡されたばかりなんだけど。でも、もう?もう使ってしまうの?)
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