夢現物語
逢鈴の曹司に逆戻りし、すぐに姫君にお文を書かれた。

『今宵、そちらに向かいます。

君がため 惜しからざりし 命さへ
 長くもがなと 思ひけるかな

でも、我が命は、もう、消えてしまいそうだよ。』

それを受け取られた姫君は、何故か、不吉な思いをされたと仰る。

「若君。どうなされました?御両親に相談なさいませ。これ、誰か。」

乳母が女房を呼び寄せて、無理矢理、父君と北の方の元へお連れした。

「まぁ、貴久。どうしたの?いきなりだわね。」

北の方は驚いていた。
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