夢現物語
「御存知ありますか?」

父君が少し考えられているので、女房は心当たりかと、もう一度聞いた。

「いや、知らぬね。」

誤魔化された。関係を教えるわけにはならなかったからである。


夜、女房は皆寝静まった。
それを見計らって、貴久は抜け出し、姫君の曹司へと向かわれた。

「崇子様、来ました………」

そこには、姫君と、薬湯を二つ持った逢鈴がいた。

「若君が、お決めになりました。葵様、いえ、姫様。」

とても真剣な顔で逢鈴が言う。
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