夢現物語
「これを。」

逢鈴は薬湯を姫君に手渡した。

「何?これは。」

「薬湯で御座います。ただの薬湯では御座いませんが。すみません、此方に。」

逢鈴は姫君に耳打ちした。姫君は驚いて、逢鈴を見つめた。

「本当………………なの?」

「えぇ、そうです。あとは、御二人でお決めになって下さい。私はこれで、失礼致しますわ。」

逢鈴は複雑な顔をして、姫君に背を向け曹司から抜け出す。

「貴久。」
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