夢現物語
薬湯を持ち、貴久のすぐ近くまで歩いて寄られた。

「これが、何か、知っているのね。」

「…………」

貴久は黙って下をご覧になっていたが、少しの沈黙の後、「ああ、そうだよ」と返事をされた。

「貴方、本気なのね。」

「ああ。」

「私は、止めたりしない。私だって、この世界は生きづらいもの。でも、私は人ではないから、自分で自分の命を奪うことは出来ないの。」

薬湯をコトリと床に置かれた。
貴久は近寄り、ゴロンと姫君の膝を枕に倒れられた。
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