夢現物語
「あぁ、死にたい。」

本当は死にたくないのであろう、涙を流されている。
それを、姫君は袖で拭われた。

「本当に?」

「ああ。」

姫君は右手に持っていられた薬湯を見せられた。

「貴方、これが、何か、分かるわよね?」

貴久は何も言わずに、ただ、こくんと頷かれた。

「飲むの?貴久、貴方、本当に、飲みたくて?」

また、何も仰らずに、こくりと頷いて、姫君が薬湯を持っておられる右手にお手を伸ばされた。
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