夢現物語
暫く、姫君は御機嫌に琵琶をかき鳴らしていらっしゃった。

それを、和泉も逢鈴も、うっとりと聞いたている。

「逢鈴の君。」

和泉がピシャリと言う。

「馬の駆ける音がするわ。何故?」

「和泉の君、私、行きますわ。」

逢鈴は立ち上がり、早馬の対応をしに行く。

少しして、ドタドタと足音がし、逢鈴が小袿と袴の裾を持ち、走って来た。

「逢鈴の君、下品ですわ!控えなさい!」

「それ所ではありません、大変ですわ!」
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