夢現物語
「北の方様、御座します。」

先触れの従者が邸の前で申し上げる。北の方はすぐに邸に登った。

「和泉、逢鈴、久しいですね。」

「はい、北の方様。」

二人はそろって、頭を下げて迎えた。

北の方は辺りを見渡してから、葵がいない、と気づいた。

北の方は裾を持ち上げ裾をさばき、何処かへ向かう。

「北の方様、何処へ!?」

「塗籠よ!葵は、塗籠にいるのでしょう!?分かってるのだよ!」

その頃、姫君は胸が潰れる、と思っておられた。
< 289 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop