夢現物語
(まだ、着かない。此処は、何処なんだ…………それに、あれからどれくらい経った?)

貴久は未だ、延々に続く黄泉路をさ迷っておられた。

(崇子様に、逢いたい。)

実際、貴久が服毒自殺を決意されてから、既に十年以上が過ぎていた。

(あぁ、御免なさい。崇子様、御免なさい。もう、逢えないかもしれない。これじゃあ、何処にも行き着けないよ。)

貴久は、歩き疲れたので、路傍に転んで、微睡まれていた。

『貴久。』

-女の声。
それも、懐かしい、優しい声。
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