夢現物語
記憶の、ずっとずっと奥深くに仕舞われてきた。

『貴久。お疲れ様。』

(崇子様…………?)

辛くて、辛くて、堪らなくて、目を、そっと、開けられた。

「如何したの、そんな顔をして。あら、私が、そんなに珍しい?」

にこやかなお顔。
生前と、全く変わらない、笑顔。

「嗚呼、崇子様。僕は………僕は、もう、貴女に、逢えなくなってしまうのかと。あの日が、最後の別れだったのかと、思っ、て。」

頭に浮かぶ言葉を、次々に口にされていたが、すぐに、泣いていらっしゃることに、気がつかれる。
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