夢現物語
「長かった。あぁ、長かったよ。一生のうちで、一番長い時を過ごした。貴女と過ごしたのは、たった何月かだけだった。でも、黄泉路を逝くとき、それを思い出して、耐えたんだ………」

姫君は、そんな貴久を、慈悲に満ちた様な、それでいて美しい笑を浮かべて、「泣かないで」と仰る。

貴久は、改めて、自分が愛してしまった異母姉、姫君を御覧になった。

姫君は、見たことの無い格好をしていた。

(倭が見せてくれた、絵巻に載っていた、天女の様だ。)

紫、白の衣に、薄色の羽衣を掛け、御髪は複雑に結い上げておられ、正に天女、であった。
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