夢現物語
姫君はとても絵がお上手い。
色を選ぶ好みも宜しい。

『今は昔。或邸に…………』

たいそう御達筆な手蹟で絵巻を描かれる。

『藤の木下、姫君、美しうてゐたり。』

あまり面白味がないかな、と姫君は思われる。

「物語を、絵巻を描くのは難しいのね。」

物語は、恋物語が多い。
姫君は、恋も愛も御存知ない。
それ故に、書きづらい所もおありなのだろうか。

(御方様みたいだわ、まるで。)
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