夢現物語
父君は、「いいや、構わないよ」と仰せられた。

「桜、若草どのの教育係、でしたかしら。しかし、唐突で御座いますね。」

「二人とも、歳に似合う教養が無いものでね。これでは、姫達の将来にも傷がつく。」

「成程、そうで御座いましたか。しかし、それなら、女房を新しく雇えば良いもの。何故、私ですの?」

父君は、一瞬苦いお顔をなさった。
それを、姫君は見逃されなかった。

「近頃、教養のある女房があまりいないから、でしょうか?私の邸もですけれど。」

図星だったご様子で、父君はうっ、とお顔を歪ませた。
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