夢現物語
「紅い瞳の女など、いや、見苦しい者はあるのでしょうか。まして、この短い髪。我が邸の女房にも、こんな者はいませんのに。」

姫君の御髪は、艶々と黒く、長かった。
父君も、それを美しいと思われ、女房達もそれを羨ましいと零していた。

「そんなことはない。其方程の者は、邸中を探しても、いないよ。」

「私は、如何すれば宜しいのでしょうね。このまま此処に居続けるか、本邸で女房になるか。」

どちらも選びたくない、という選択肢は最早なかった。

「和泉や逢鈴を連れて参るのを、お許し願いませんか………それと、教育係以外、何もしなくてもよろしいのならば。私は、世間一般の女房がすることは、何一つ出来ません故に。」
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