夢現物語
姫君は、和泉と逢鈴を連れ、本邸へとお行きになった。

姫君(藤一条)は女房にしては広く立派な曹司(部屋)を頂かれた。

調度品は姫君が自邸から持ち出されていたので、殺風景にはならなかった。

和泉も髪を削ぎ、女童ではなく、女房として、表向きは桜に仕えることとなった。


「姫様、姫様方。」

手習いの時間で御座いますよ、と古参女房の一人が言おうとした。

「見て、若草。まぁ、なんて美しい衣でしょう。」

「本当、見つけてくださったお父様には感謝しないといけませんね、お姉様。」
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