夢現物語
しかし、二人は、父君のお買いになった新しい衣に目を奪われ、一枚一枚眺めながら品定めらしきことをしていた。

「藤一条の君………あの方々が、姫様です。左が桜の姫様、右が若草の姫様で御座います。」

二人に見えない位置で、女房のうちの一人が姫君に教えた。

「あれが、姫君ですか………いつもあの様に、現を抜かしているのですか。」

「はい、でも、いつものことですから………教育係としていらした方は皆、それに呆れられて去ってしまうのですけどね。」

女房は苦笑した。
どうやら、父君や女房の話は本当らしい。
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