夢現物語
「さぁ。」

扇で顔をお隠しになりながら、姫君、藤一条は膝を進められる。

「初めて御会い致します、姫君、藤一条で御座います。」

姫君は二人の前に座られた。

「扇を外せ。」

桜は姫君のお顔を拝見したく、そう言った。

姫君は嫌々ながらも扇をたたみ、お手に持たれた。

「藤一条………と言ったな、何故此処に参られた。」

若草の乳母が強い口調でそう申し上げた。
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