夢現物語
「君ありと 聞くに心を つくばねの みねど恋しき 嘆きをぞする」

最後は、いつか和泉に読ませた『落窪物語』の歌でしめられた。

出番の失せることを悔やむ女房達や、桜、若草、そして両方の乳母の視線が痛い。

(何故、この様な目に遭わなくてはならないのだろうか。)

「日に添えて うさのみまさる 世の中に 心づくしの 身をいかにせむ」

誰にも聞こえない様、ぼそりと呟いかれた。

「-世が、世ならば。」
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