夢現物語
和泉は藤一条の姫君が女房扱いされているのが辛かったが、やはり、褒められているのを見ると、誇らしく思う。

「初めの場面、姫君の恰好が美しかったわ。唐風、だったかしら。髪は短かったけれど、顔が、ね。」

藤の君は初め、大陸風の着物をお召になり、登場される。
実際の母君もそうであられた。

「でも、これを書いた藤一条の君は変わった方ね。紅い瞳をしているって、もう邸中の噂なのよ。」

和泉は、何ですって、と気を取り乱してしまった。

「あの御方が、そんなに噂になってしまっているの?まぁ、何て哀れな。」

バレないように、他人行儀で悲しむことしか出来ないのが、辛い。
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