夢現物語
「藤一条の君は、どの楽器も弾かれますのよ、そして、琵琶の名手でいらっしゃるのだから!」

と、口を開いてしまった。

「琵琶の、名手………か。この女が。」

乳母がきつい視線を向けるのだが、それを無視し、和泉は「左様で」と言う。

「ならば、この場で弾いて見せろ。名手と申すのが、嘘か真か、此処で見届けるのよ。」

「御意。」

乳母が琵琶を持ち、参る。
姫君はそれを受けとられた。

(弾かなければ、ならないのだ。)

琵琶の弦を御覧になり、固まったままでらっしゃる。
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