夢現物語
隣を見れば、女房が顔を顰めて座っていた。
どんなに酷い演奏でも、通常を装うのが、普通でしょう、と和泉は思う。

成程、和泉や藤一条の姫君が、嗜み深く教養の高い、と噂されるのは、嘘と言えない。

話は戻り、桜は筝の琴を弾いているのだが、壊れているのか、と思いたい。
これは、遠回しに言っているだけで、実際は、「下手すぎる」。

(嗚呼、どうなるのやら。明後日が宴なのに。)


姫君の御心配をよそに、はや、宴の日はやって来てしまった。

姫君は不安で打ち沈んでらっしゃるが、桜、若草はキャッキャと楽しんでいる。
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