夢現物語
「藤一条の君、そろそろ、お時間ですよ………」

「時間………あぁ、姫君達と合奏するのでしたね。存じておる。」

藤一条の姫君は琵琶を抱く様にお持ちになって、御簾をくぐった。

「姫君、お時間ですよ。準備をなさい。」

「あら、もう?つまらないわね。まだ、遊んでいたかったわ。」

桜も若草も、筝の琴があまり上達しなかった様で、たいそう、姫君はがっかりなさる。

「いいえ、なりませんよ。この演奏を目当てにいらした方もいらっしゃるのですからね。」

これは、れっきとした事実であり、脅しではない。
< 74 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop