夢現物語
(私を試したい、ですって?あぁ、立場を変えてご覧よ。きっと、嫌になるわ。それに…………)

姫君はすっと目線を変えられ、桜と若草を御覧になる。

(例え、私がどれだけ上手く弾こうとも、結局、名誉はこの二人のもの。あぁ、私はこの二人と姉妹なのに………)

思うだけ、悲しくなる話である。

(嗚呼、まさに、「とりかえばや」。あの二人と、立場を取り替えたや………)

彼処(あちら)は姫君で、此方(こちら)は、表向きは上臈とは言え、ただの女房である。

「姫君が、二人の演奏を支える」というのが、望まれる。

(ほら、私の出る幕は、無いではないの。)
< 76 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop