夢現物語
(久しぶりに、外の空気を吸いたいわ。今は盛り上がっているから、私独り、居なくなったところで、バレやしないわね。)

一枚、衣を脱いで被衣にし、姫君は庭に降りられた。

「やはり、夜の星は美しいわ。」

それだけのことで、また、姫君の御目に涙が溜まってゆく。

(あら、嫌だわ。こんなことで…………なんて涙脆くなったのかしら。)

独り、ぼんやりと外の景色を眺めながら歩いていらっしゃると、「誰だ」と呼び止められてしまわれた。

「誰と思うか。」

と、姫君は被衣を更に深く被られて、低いお声でそう問われた。
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