夢現物語
「質問に質問で返すとは、無礼ではないのか。」

相手は少年だか、どう見ても身なりが宜しく、この邸の若君と思わされる。

「今宵、この邸の姫君二人と演奏した者で御座います。」

そう姫君が仰ると、成程、と彼処はお言いになる。

「琵琶の名手と噂される、藤一条の君………か。」

少年は呟いかれ、じっと姫君をご覧になる。

「あ。」

ビュッと一瞬強い風が吹いて、姫君の被衣が飛ばされてしまった。

「被衣が…………」
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