夢現物語
弱々しい、女々しい声だ、と少年は思われた。

中から覗いたのは、この世の者とは思えない、美しいお顔。

-嗚呼、何と美しい女だろう。
少年は、惚れてしまわれた。

それ程に、藤一条の姫君のお顔が美しかったのだ。
皮肉にも、一目惚れしたこの姫君は、彼の姉であるのに。

「お目にかかった事を、どうか、内密になさって下さいまし。」

何とも妖しい娘だ、とつくづく彼は思われたのだ。
< 81 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop