夢現物語
何もご存知ない貴久は、楽観的に、そう問われた。
姉を、どうするおつもりで?とは思ったが、今更、それを言うのも酷である様な気がしてならない。
「貴久様。北の方様は、近いうちに寺に参り出ようとなさっております。しかし、藤一条様はお行きにならないのです。何とか理由をつけて邸に残り、藤一条様の曹司に忍び込まれるのが一番良いでしょう、恐らくは。………藤一条様が、何と仰るかは分かりませぬが。」
そう、本当の主人である姫君を裏切り、貴久にそう教えてしまったのだ。
それをお聞きになった貴久のお気持ちは、直ぐに予想が付くのだが、敢えて言わないこととしよう。無粋である故。
姉を、どうするおつもりで?とは思ったが、今更、それを言うのも酷である様な気がしてならない。
「貴久様。北の方様は、近いうちに寺に参り出ようとなさっております。しかし、藤一条様はお行きにならないのです。何とか理由をつけて邸に残り、藤一条様の曹司に忍び込まれるのが一番良いでしょう、恐らくは。………藤一条様が、何と仰るかは分かりませぬが。」
そう、本当の主人である姫君を裏切り、貴久にそう教えてしまったのだ。
それをお聞きになった貴久のお気持ちは、直ぐに予想が付くのだが、敢えて言わないこととしよう。無粋である故。