夢現物語
(嗚呼、私は何故、こんな所で、女房勤等、しているのかしら。)

姫君は御自身の曹司で、独りぼうっとなさっていた。

(袿も単衣も、父君が御用意して下さったから、みすぼらしい思いはしなかったけれど、やはり、扱いは、悪いと思うわ………私だけ詣ででるのを許されないだなんて。)

御衣裳は此方に女房としていらっしゃった際に、父君が御用意なさった物で、桜達と同等のお品だった。

(いくら持っている物が良かろうと、結局、それを生かす程の身分は、もう、無いのに。)


逢鈴は参り出るために、来て行く装束を用意していた。
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