夢現物語
(私の、姫様が、こんなことになられるなんて。私の、何よりも自慢の姫様が、どうして………)


明くる朝、父君、北の方、子女達は数多の美しい女房を連れて、寺に詣で出た。
ただし、貴久の若君だけが、何故か詣でるのを遠慮された。

(何処の御寺に詣でるのかしら。和泉と逢鈴は、無事に帰って欲しいわ、女房で私に親切にしてくれたのは、あの二人だけなのだから。乳母もいない私は、あの二人無しでは生きては行けない。)

姫君はやはり御自身の曹司にて、いつもと変わらず、溜め息をつかれていた。

(藤一条の君…………)
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