夢現物語
藤一条の姫君は、表向きはちょっとした病により詣でるのを遠慮したことになっている。
北の方が遠慮させたのだ。
(あの美しい方が、この御簾の奥に、居る。是非とも、見てみたい。あの時は、不慮の事故、だったのだから。)
普通の女房ならば、邸の若君たる貴久にはある程度してから目通りが許可されるはずだった。
それを許可されていないのは、姫君が実際この邸を牛耳っている北の方に認められていない、ということである。
そして、若君の貴久と同じ御身分である、ともとれる。
(いきなり出て行けば、藤一条の君が警戒して、この御簾を潜らせてはくれないであろう。ならば………)
貴久は一度、御自身が住まわれる対の屋に戻られ、置いてあった唐櫃を開けられた。
北の方が遠慮させたのだ。
(あの美しい方が、この御簾の奥に、居る。是非とも、見てみたい。あの時は、不慮の事故、だったのだから。)
普通の女房ならば、邸の若君たる貴久にはある程度してから目通りが許可されるはずだった。
それを許可されていないのは、姫君が実際この邸を牛耳っている北の方に認められていない、ということである。
そして、若君の貴久と同じ御身分である、ともとれる。
(いきなり出て行けば、藤一条の君が警戒して、この御簾を潜らせてはくれないであろう。ならば………)
貴久は一度、御自身が住まわれる対の屋に戻られ、置いてあった唐櫃を開けられた。