夢現物語
合奏中も、貴久は、琵琶をお弾きになる姫君に暫し、うっとりと見とれていらした。

(やはり、この女は、美しい。この女が手に入れば、もう、何もいらない。)


(あら?)

姫君は袖の中の、ちょっとした異常に気がつかれた。

(何か袖に………文?かしら。)

中に入っていたのは御文で、それは、貴久がお書きになった、「本当の」御文であった。

それを開いて見られると、一つの歌がすぐにお目につかれた。

「これ………」
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