夢現物語
『君ありと 聞くに心を つくばねの みねど恋しき 嘆きをぞする』

貴女の噂を聞いてから、見たことも会ったことも無いけれど、それでも恋しくてたまらない-と言う意味であろう。

「御逢いしたいと、ずっと、願っておりました…………藤一条の姫君…………」


風に吹かれて、明かりにしていた火が消えた。
美しい装束が、くるりと翻った。
几帳が、パタンと音を立てて、倒れた。


-その夜は、澄んだ空が、只只、美しかった-
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