泣き出す雨に教えてあげて【短編】
泣き出す雨に教えてあげて
私が最後に笑ったのは、いつのことであっただろうか………?
ふと、そんなことを思った。
程よい涼しさを感じながら、駅のホームで電車を待つ。
ホームの屋根と柱の隙間から、今すぐにでも、雫が滴りそうな空を見た。
何故だろう。
私が心の底から、笑わなくなったのは。
少し湿った空気が、私の肺に直接入り込むようで、息苦しくさせる。
静かに深呼吸をしてみても、今一つすっきりもしない。
それどころか、モヤモヤは変わらず積もっていくばかりだ。
思わず、溜め息が溢れる。
それでも、そのモヤモヤはただ舞い上がるだけで、また静かに積もっていく。
あの人と居れば、それを気にすることもないのに。
ここ最近は一人になると、いつもこうだ。
まったく情けない。
自身でもそう思う。
あの人の他愛もない話題に、心の底から笑っていた。
実は言うと今日は、そんなあの人の誕生日である。
だからと言って、今までメッセージを送ったことなどはなかった。
周りの人が言っているのを聞いて、流れで祝福していた。
たった今は、少し話がしたい。
別に面と向かって、声でやり取りをしなくったっていい。
画面越しに文章でもいいから、あの人と接触したいと思った。
「今、何してるかな…」
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