泣き出す雨に教えてあげて【短編】
スマートフォンの画面を表示させ、無料通話アプリを開く。
あの人の名前に、そっと触れた。
そして、そのままメッセージを打ち込んだ。
『お誕生日おめでとう』
生まれて初めて異性に、こんなメッセージを送る。
送信ボタンを押そうとする手が、少し震えていた。
送って良いものなのか、迷った。
内実は送りたい。
接触を図りたい。
我ながら気色の悪い奴だって、わかっている。
それに、私があの人に我が儘なんて、とても言えない。
だって私は、あの人の何でも無いのだから。
悩んだ結果、結局送信ボタンを押した。
ひどく悩んだくせに、私の文章は呆気なく彼の元へ飛んでいった。
きっとあの人は今、忙しい。
彼は今、地元に帰っている。