泣き出す雨に教えてあげて【短編】
対話の始めはどうであれ、私の我が儘に付き合わされて、彼はどんな気持ちだろう。
ああ。駄目だ。
私はもっと、頑張らなければならないのに。
周りはもっと、死にもの狂いで頑張っているのに。
頑張ってないくせに、我が儘は言えない。
彼に迷惑をかける私が、情けなくて泣けてきた。
これじゃあ、私、ただ構ってほしいだけみたいじゃないか。
実際、そうだったのかもしれないけど。
届いた軽い通知音に、重苦しい感情の私が反応する。
『俺だって無かったよ』
目に入った過去形の文字列が、妙に気になった。
『俺だって絶対、とは言えないよ。
でもさ、悪く言えば毎日何時間も、時間潰して勉強とかさ、いろいろ準備してきたわけだし』
確かに私も、ほんの少しの空き時間を見つけては、馬鹿みたいに過去問集を頭に叩き込んでいた。
時々、ふと我に返ることもあった。
それは私にとって、ついさっきの話でもある。
今は、笑ってしまいそうなほど軽い通知音が、立て続けに鳴る。