御曹司と婚前同居、はじめます
顔を上げて真正面から女性を見る。
見れば見るほど綺麗な人だ。
大きくてどこか挑戦的に感じる黒い瞳には、発色の良い真っ赤な口紅がよく似合っていた。
すらりと伸びた手足は日本人離れしていて、そこまでヒールの高い靴を履いていないので元々背が高いのだろう。
「ベリアで秘書の仕事をしております、綾崎(あやさき)まやかと申します。瀬織建設に足を運ぶことも多いので、今後も会う機会があるかと思います。よろしくお願いしますね」
まやかさんはにっこりと微笑む。
「よろしくお願いします」
私もなんとか作り笑いを浮かべた。
ベリアは住宅設備機器業界の大手だ。住宅に詳しくない人間でも絶対に一度は耳にしたことがある社名。
凄い人と付き合っていたんだ。……そりゃそうだよね。瑛真だって瀬織建設の副社長なんだから。
「もういいだろう。失礼するよ」
瑛真は煩わしそうに言って私の手を強く引いた。
慌てて二人に頭を下げる。
通り過ぎる際に見たまやかさんの、瑛真へ送る熱い視線に胸がざわついた。
私のことなんて少しも見ていなかった。
あの人、きっと今でも瑛真のこと――。
見れば見るほど綺麗な人だ。
大きくてどこか挑戦的に感じる黒い瞳には、発色の良い真っ赤な口紅がよく似合っていた。
すらりと伸びた手足は日本人離れしていて、そこまでヒールの高い靴を履いていないので元々背が高いのだろう。
「ベリアで秘書の仕事をしております、綾崎(あやさき)まやかと申します。瀬織建設に足を運ぶことも多いので、今後も会う機会があるかと思います。よろしくお願いしますね」
まやかさんはにっこりと微笑む。
「よろしくお願いします」
私もなんとか作り笑いを浮かべた。
ベリアは住宅設備機器業界の大手だ。住宅に詳しくない人間でも絶対に一度は耳にしたことがある社名。
凄い人と付き合っていたんだ。……そりゃそうだよね。瑛真だって瀬織建設の副社長なんだから。
「もういいだろう。失礼するよ」
瑛真は煩わしそうに言って私の手を強く引いた。
慌てて二人に頭を下げる。
通り過ぎる際に見たまやかさんの、瑛真へ送る熱い視線に胸がざわついた。
私のことなんて少しも見ていなかった。
あの人、きっと今でも瑛真のこと――。