御曹司と婚前同居、はじめます
第6話 * 曝け出す感情
タクシーはとある高級ブティック店の前で止まった。
無理やり瑛真の腕に手を回されて、エスコートされる形で颯爽と店内を歩いていく。
一階の高級感溢れるレディースフロアだけでも心臓がバクバク鳴っていたのに、二階のVIPサロンに通された時には本当に心臓発作でも起こしそうになった。
一体全体どうしたというのか。急展開に思考と感情が追いついていない。
次から次へと華やかなドレスが目の前に運ばれては消えていく。
「ああ、これがいい」
瑛真の一声で、私はそのドレスと共に優雅で広すぎるフィッティングルームに連れて行かれ、あれよあれよという間にドレスを着せられていた。
「とてもお似合いです」
店員にお世辞を添えられて、鏡の前の自分と向き合う。
可愛い。
似合っているかどうかは置いておいて、ドレス自体は本当に可愛らしいものだった。
胸までが白色で、ウエストのリボンを境に真っ赤なスカートが広がっている。胸元のチュールレースがフェミニンな雰囲気を醸し出しているが、だからといって甘くなり過ぎていないのは絶妙な加減のスカート丈と布量おかげだ。
生地はよく分からないけれど、とにかく繊細なのは分かる。
さすがとしか言いようがない。
良い物はやっぱりとことん良い。