御曹司と婚前同居、はじめます
「車椅子は通れるように計算されているのかもしれないけど、この通路幅では介助者が付き添うのは厳しいかもしれない。車椅子の人が一人で駅を利用することなんて限られているはずだし、家族だったり、誰かしら付き添い人がいると思う。介助者がいれば手すりはなくてもなんとかなるんじゃないかな」
ひとしきり話してから瑛真を窺い見た。
「ありがとう」
優しい笑みを浮かべながら見つめ返してくる。
とても些細なことだけれど、こういうことの積み重ねで瑛真への気持ちが大きくなっていく。
でも、それと比例して黒い感情も大きくなっていくことにも気付いている。
こんなの私らしくない。
「顔色が良くないな」
不意に伸びてきた手が頬に触れる。
「あまり根を詰めるなよ」
もう、本当に過保護なんだから。空き時間に勉強をしているだけなのだから、根を詰めるも何もないのに。
ずっと瑛真と過ごしていたら、いつか自分を甘やかしてしまいそうで怖くなる時がある。
瑛真は私の堅実的な部分に好感を持ってくれていた。だからそれは失わないようにしないといけない。といっても、長年染み付いたものはそう簡単に消えたりはしないだろうけれど。
自分というものをしっかりと持って、今以上に自信を失わないようにしなければ、これからも一緒に過ごすことは到底無理だと思う。
周りの言うことに惑わされていないで瑛真のことを信じよう。
――そう思っていたのに、この日以来、瑛真は私を遠ざけるようになった。
ひとしきり話してから瑛真を窺い見た。
「ありがとう」
優しい笑みを浮かべながら見つめ返してくる。
とても些細なことだけれど、こういうことの積み重ねで瑛真への気持ちが大きくなっていく。
でも、それと比例して黒い感情も大きくなっていくことにも気付いている。
こんなの私らしくない。
「顔色が良くないな」
不意に伸びてきた手が頬に触れる。
「あまり根を詰めるなよ」
もう、本当に過保護なんだから。空き時間に勉強をしているだけなのだから、根を詰めるも何もないのに。
ずっと瑛真と過ごしていたら、いつか自分を甘やかしてしまいそうで怖くなる時がある。
瑛真は私の堅実的な部分に好感を持ってくれていた。だからそれは失わないようにしないといけない。といっても、長年染み付いたものはそう簡単に消えたりはしないだろうけれど。
自分というものをしっかりと持って、今以上に自信を失わないようにしなければ、これからも一緒に過ごすことは到底無理だと思う。
周りの言うことに惑わされていないで瑛真のことを信じよう。
――そう思っていたのに、この日以来、瑛真は私を遠ざけるようになった。