御曹司と婚前同居、はじめます
「スカート履いてそうしていると、ちゃんとしたお嬢さんだね」
「嫌味ですか?」
「褒めているのに」
今のところ車は会社がある方角へ向かって走っている。
いつも乗っている瑛真の車とは当たり前だが乗り心地が違う。創一郎さんが握るハンドルの中心部にはVOLVOの文字。
「素敵な車に乗っていらっしゃるんですね」
「車のこと分かるの?」
「多少は。それに、瑛真が車を買う時にBMWとVOLVOで迷ったと言っていましたから」
「へえ」
すっかり元のポーカーフェイスに戻ってしまった。
運転している横顔は澄ましていて、少し子憎たらしい。
「休みの日なのにスーツなんですね」
「さっきまで会社にいたからね」
「お疲れ様です」
「うん、ありがとう」
口の端を少しだけ持ち上げて微笑んだ。
困った人だけど、やっぱりカッコイイと思ってしまう自分が悲しい。
――あれ?
ふと、彼の胸元に目を止める。
ネクタイピンに見覚えがあったからだ。
これと同じものを瑛真がよく付けている。
そのことを知っているか聞いてみようとしたけれど、また余計な火種を増やしてしまうかもしれないと思い直し口を噤んだ。
「嫌味ですか?」
「褒めているのに」
今のところ車は会社がある方角へ向かって走っている。
いつも乗っている瑛真の車とは当たり前だが乗り心地が違う。創一郎さんが握るハンドルの中心部にはVOLVOの文字。
「素敵な車に乗っていらっしゃるんですね」
「車のこと分かるの?」
「多少は。それに、瑛真が車を買う時にBMWとVOLVOで迷ったと言っていましたから」
「へえ」
すっかり元のポーカーフェイスに戻ってしまった。
運転している横顔は澄ましていて、少し子憎たらしい。
「休みの日なのにスーツなんですね」
「さっきまで会社にいたからね」
「お疲れ様です」
「うん、ありがとう」
口の端を少しだけ持ち上げて微笑んだ。
困った人だけど、やっぱりカッコイイと思ってしまう自分が悲しい。
――あれ?
ふと、彼の胸元に目を止める。
ネクタイピンに見覚えがあったからだ。
これと同じものを瑛真がよく付けている。
そのことを知っているか聞いてみようとしたけれど、また余計な火種を増やしてしまうかもしれないと思い直し口を噤んだ。