御曹司と婚前同居、はじめます
「まだ言いたいこと聞きたいことがあるのなら遠慮せずにどうぞ」


ハッとして、小さく頭を振って正気に戻す。

いけない。雰囲気に流されるところだった。


「一度引き受けておいて申し訳ないけど、やっぱりこの話はなかったことにして欲しいです。あと、許婚やら婚約者やら、その辺りの話はまたおいおい話し合いましょう」

「断る」


はあ!? こっちが下手に出ればいい気になって!


「あのねえ! いくらなんでも一方的じゃない!? もう少し私の気持ちも考えてよ!」


我慢の限界に達してとうとう声を荒げてしまった。お父さんは驚きで軽く身体を仰け反らせる。

けれど瑛真の表情は微塵も変化しなかった。


「美和の気持ちはこれから整えていけばいい」

「と、ととのえ……?」

「そう。心配しなくて大丈夫だ。美和は必ず俺と結婚したくなる」


びっくりするくらいの自信と傲慢さだ。

こんなにも話が通じないのは施設にいた認知症のお年寄り以来で、この人も脳が正常に機能していないんじゃないかと心配になってくる。
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