御曹司と婚前同居、はじめます
「私との婚約だってそう。瑛真は自分で婚約者を選んだわけじゃない。親に勝手に決められたのよ？　欲しいものが手に入る？　その逆よ。自分以外の誰かに不必要と判断されれば二度と手に入らない。瑛真には瑛真にしか分からない苦しみを味わっているの。当事者でもないのに分かったような口を利かないで」


ひとしきり喋ってから我に返る。

やってしまった。かなり上からな態度を取っちゃったよ……。

途端に恥ずかしさが込み上げる。


「美和」


また、唐突に抱きすくめられた。


「もうっ！　またそうやって！」


場所をわきまえてよ！


「ありがとう。やっぱり美和は昔から俺の一番の味方だよ」

「……え？」

「まあ、そういうことだ。創一郎」


瑛真は私を解放して、手を繋ぎ直した。


「それに、酷いことかどうかはじきに分かる」


創一郎さんは何か言いたいのを必死に堪えているといった感じだった。


「話はこれで終わりだ。俺たちは帰る」

「ちょっと待ってよ！　こんなの納得がいかないわ！」


まやかさんが叫んだ。


「創一郎、おまえの仕事だ」


瑛真はまやかさんに目もくれず、意味深なことを言う。
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