御曹司と婚前同居、はじめます
「美和の服装を見る限り、今日からすぐに働いてくれるつもりだったんだろう? だとしたら話は早い。このまま俺の自宅へ向かおう。感動の再会をもう少し堪能したいところだが、あいにく仕事が立て込んでいてそこまで時間を取ることが出来ないんだ。柏原(かしわばら)、車を回してくれ」

「かしこまりました」


流暢(りゅうちょう)に勝手に話を進めた瑛真は、柏原と呼ばれた男性が立ち去ると「おじさん」とお父さんに向き直る。


「美和さんを必ず幸せにします。今後もどうぞよろしくお願いいたします」


深々と頭を下げた瑛真の頭頂部を唖然として見つめた。

これっていわゆる結婚の挨拶というものじゃないの?


「こちらこそ美和をよろしくお願いします」

「ちょっとお父さん!」


続いて頭を下げたお父さんの肩を掴んで、ソファから身を乗り出して強く揺さぶった。


「美和、行こうか」


中腰になっている私のお腹に手を回し、瑛真は力づくだけど優しさが感じられる動作で私を連行する。


「や、やだー!!」

「駄々をこねる美和も可愛いな」


何が駄々をこねるだ!
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