御曹司と婚前同居、はじめます
「でもその考えだと、ちょっと腑に落ちないことがあるの。まやかさんと瑛真をくっつけることが目的なら、今日あの場に私を連れていったのはおかしいと思わない？　嘘がバレてしまうことは想定できたはずだもの」


瑛真は私の頭を撫でていた手を止めて考え込む。私はゆっくりと上体を起こした。

勇気を振り絞って少しだけ瑛真に寄りかかると、すぐに右腕が抱き寄せてくれる。

毎日沢山触れ合っているのに、こういうふうにされるといつだってドキドキする。

こうやって甘えてもいいんだよね。


「諦めさせたかったんだろう。どう頑張っても、俺が美和以外を好きになるわけがないんだから」


諦めさせたかった。その言葉が胸にストン、と落ちた。


「全ては創一郎さんの思うがままに事が運ばれたってわけね」


あの別れ際の笑みを思い出して、感嘆の深い吐息がこぼれる。

思っていた以上に策士だわ。私も利用されていたのね。

どっと疲労感が襲ってきた。心のもやも晴れたことで食欲も湧いてきた。


「ちょっと早いけど夕飯の支度でもしようかな」

「それなら俺も手伝う」

「その肩で？」


くすっと笑うと、


「もう包帯は取る」


思いがけない台詞が飛んできた。
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